概要
Observability Conference Tokyo 2025
2025年10月27日開催。今回が初開催。 OpenTelemetryとGrafanaは好物かつ社内に浸透させたいので参加。
資料は公開され次第、リンクを添付する。
セッション
1. Affordable Observability: Strategy to Implementation
LizさんによるKeynote。
開発時に後回しになりがちなObservabilityを担保するための方法や、pitfallを回避するための方法、 テレメトリーデータのサンプリングを含む方法論について解説されていた。 私自身それなりの回数カンファレンスに赴いているものの、ここまでKeynoteとして完成されたものは多くない。 他の登壇者の方も影響を受けたためか、Keynoteから一部引用する形での登壇となったり、Keynoteで触れていた内容に触れる一幕があったりと大きな影響を与えていた。 これからObservabilityに取り組もうとする組織にとっても、これまで取り組んできたことのある組織にとっても非常に有用なKeynoteであり、定期的に振り返りたいと思えるKeynoteであった。
なお、私はこんなことを記しながらも遅刻していたので早くもアーカイブを視聴したい気持ちである。
2. 可観測性は開発環境から、開発環境にもオブザーバビリティ導入のススメ
LayerXの大平さんによるセッション。
先のKeynoteの箇所で少し触れたが、大平さんはセッションの中で既にLizさんのKeynoteで触れた内容が出てきたことで多少なりとも影響を受けていた。 決してそれは聞き手としては悪い意味ではなく、多くの人が重要だと思っているからこそ内容の重複が発生していると感じた。
セッションでは開発環境はステージング環境より前の、PRの承認が通った後にDeployする環境と定義付け、その環境に対してDatadogを導入していくというもの。 私の知っている限りではステージングでもない、開発環境に対してAPM製品を導入している事例は聞いたことがなく新鮮であった。また、Azure環境の経験が乏しい開発者が多かったことや、開発環境へ導入する経験が将来的に本番環境への導入時への足掛かりになる見立てであったことなど、導入に対しては非常に理解できるセッションであった。
個人的には開発環境に対してもDatadogを導入することによるコスト負担と、導入によって得られた知見や開発者体験の向上といったメリットはどちらが優位であったかは気になった。 懇親会において大平さんとは会話したにも関わらず、聞きそびれてしまった。
3. 映えないObservability
MonotaROの岩永さんによるセッション。
MonotaROにおいて一般的な文脈におけるObservability(映えるObservability)と、主にレガシー環境を始めとする制約のかかる環境におけるObservability(映えないObservability)に関するセッションであった。 日常的にTwitter(X)を見ていても、主に出てくるのはスタートアップを中心としたキラキラした世界における映えるObservabilityが中心だと感じる。その一方で、岩永さんが触れていたように実際にはレガシー環境のモダナイゼーションも多く存在しているし、現にここ1年くらい私もレガシーのことを考えてきた。 そのような環境では一般的なCloudNativeで取られる手法が取り込めないケースもある。
本セッションは主にそういった制約下において、Observabilityによって解決されるべき課題が何であるかを模索することが大事であると理解した。ただし、これは映えるObservabilityでも同じことが言えると感じており、APM製品を導入して終わりな世界ではないはずである。 テレメトリーデータを取得することによって、どのような世界にしたいかを考えるべきなのだと思う。
4. Observability文化はなぜ根付かないのか よくある失敗とその回避策
ULSコンサルティングの佐野さんによるランチセッション。
Observabilityの担保のためにAPM製品が導入されることが多いが、それで終わりではないのはここまでのセッションの感想で触れた通りである。 本ランチセッションではより文化的な面から、Observabilityの担保が失敗する仕組みについて解説していた。
懇親会やスポンサーブースで会話をしていて感じたが、Observabilityの導入を推進しようとしている人は開発や運用のチームに属しながらも他のチームを気にかけようとしている人が多いように感じる。というか、恐らくそのように立ち回らないとうまくいかないだろうとも思う。 これは本ランチセッションでも触れられていたように、Observabilityは開発チームが全く気にしなくて良いものでもないし、運用チームが全ての責任を負って遂行するものでもないからである。 お互いが歩み寄って関係性を構築した上で、必要なデータを擦り合わせたりダッシュボードを眺める機会が成功への近道である。 とはいっても、俗にいうJTCにおいて組織の壁を越えて文化を浸透させるのは容易なことではないのが現実だとも思ってしまった。 頑張りたい。
5. プロファイルとAIエージェントによる効率的なデバッグ
AWS Japanの山口さんのセッション。
参加できなかったものの、Go Conference 2025のDay1でpprofに関するワークショップを開催していたことを思い出しながら聞いていた。私も時々トレースとプロファイリングの違いについて聞かれることがあり、プロファイリングは性能のために継続的に監視するものである一方、トレースはRequest単位で追いかけたい時に見るものと説明はしている。 本セッションでは非常にわかりやすく、他のテレメトリーデータとの違いを説明しており、今後の説明にはこれを利用させていただこうと思った。
セッションではGoでの非効率なI/Oを発生させたコードでのFlameGraphを紹介し、ある程度知見のある人でないと読み解くのが難しいものであった。その一方で、生成AIを利用することである程度当たりをつけることが可能であることに言及。 プロファイルデータのみならずログを食べさせてあげても、それなりに良い回答が得られる体験は得ているため、改めて運用フェーズにおける生成AIとの相性の良さを感じた。
ちなみにこれはセッションと全く関係のない感想であるが、私が入社した少し後くらいからChatGPTは触れるような時代になっていたものの、業務におけるQA対応では先輩方から教えを乞いながら学んでいた。 ただ生成AIを利用するのが当たり前な昨今において、CSに関する知識やある程度低めのレイヤに関する知識はどうやって身につけるべきなのかは日常的に悩んでいる。
6. ピーク時165万スパン/秒に立ち向かえ!オブザーバビリティコストを効率化するABEMAにおけるトレースサンプリングの実践的事例
Datadog Japanの逆井さんとAbemaTVの山本さんによるスポンサーセッション。
実環境でのObservabilityにおいてSamplingを扱っていない人間なので非常に参考になった。 ヘッドで行うかテールで行うかの選択とそれぞれのメリデメや、実際にSamplingするにあたって落としてはいけないデータとある程度落として良いデータの判別をつけるための一種の判断材料になるセッションであった。 Datadogのスポンサーセッションであるものの、Datadogに限らずOpenTelemetryを利用しているのであれば参考になるセッションであると感じた。 セッション中で触れていた165万スパン/秒を全てDatadogで保存した場合に月12億円ものコストがかかるのは、単純に数字が大きく驚いた。
7. オブザーバビリティと共に育てたID管理・認証認可基盤の歩み
カミナシの高井さんによるセッション。
認証認可の世界に限らず重要なコアロジックはライブラリ依存になっている一方で、十分なテレメトリーデータの確保をライブラリ経由で行えないことが課題となった事例が紹介されていた。 そのような状況の中で安易にライブラリのforkを行って管理地獄にするのではなく、プロファイルも併せて利用しつつ原因箇所の特定を行い、そもそもの認証方式自体を変更して対応した流れは素晴らしいものと感じた。 それと同時にライブラリを提供する側として仕事をすることがあるため、欲しいテレメトリーデータをユーザが取れるように拡張性を残すことの必要性を強く感じた。
スポンサーブース
今回は全てのブースを巡った。特に記憶に残っているブースに関して記載する。
1. Grafana Labs
Grafana大好きおじさんなので、ブースでTシャツを頂けて大喜び。 あまり技術的な話をしないまま次のブースに行ってしまったのが心残り。
2. カオナビ
OpenTelemetryとかAPMツールはあくまでもツールであって、それ自体の導入で全てが上手くいく訳では無い旨の話を長々とさせていただいた。 銀の弾丸は存在しないし、組織によってやることは異なるから文化の醸造が大事だと改めて感じた。
3. PagerDuty
PagerDutyで出来ることを熱く語っていただいた。PagerDutyでも実際に十分活用できているところは少ないことも学んだ。 APM製品のみならずインシデント管理の領域でもそうなってしまう悲しみも感じた。
全体的な感想
初開催となったObservability Conference Tokyo 2025であったが、非の打ち所がないカンファレンスであった。 運営の方の対応が非常に丁寧であったことは勿論のこと、会場のwifiは問題なく繋がり、コーヒーや軽食の提供まであり1日を通じて楽しめた。 次回の開催が未定であるものの、個人的にObservabilityの領域が一番好きなこともあり来年の開催を楽しみにしている。